インタビュー

一人ひとりが小さなことをやっていくってことが大事

インタビュー

2017.12.05

ぶんぶんフィルムズ 鎌仲ひとみ監督にインタビューをさせていただきました。

鎌仲監督たちが主催する「3+1」のイベント内容をもとに、鎌仲監督の活動についてお伺いしました。

 

−先 日 の イ ベ ン ト “NO MORE HIBAKU MEETING” では、福島からの被ばくを避けて避難した人と、不安を抱えながらも様々な事情から福島に残った人の間に生まれた「分断」を乗り越えていくということを趣旨としていましたが、イベントを終えた感想をお聞かせください。

鎌仲:一言で分断を乗り越えるといっても現実には、人の気持ちを変えることはできないなってずっと思っていました。本当は優しい気持ちがあるんだけれど、それを表現することがなかなか難しい。だからこの前のイベントでは、そういうこともまず口に出して言ってみようと考えました。話さないで、もやもや持っていたら、その状態がずっと続いて、そのうち投げ出すということが起きてしまうけれど、仲間と一緒にそのもやもやをシェアしてみれば、じゃあ私はこれができるかもしれないという風に、ちょっともやもやが晴れて、そこから別のステージに進める。分断を乗り越えるっていうのは、「私はそれをどう受け止めているのかなあ」ということを、もうちょっと一人ひとりの中で落とし込むということだと思います。先日のイベントではそれを目的としていましたが、一人ひとりのなかでその変化が起こせた手ごたえを感じることができました。皆さんの反応から、「すごくよかった。自分の思っていたことが話せた。」というふうに。あの会は、すごく小さい集まりだったけれど、自分たちのことをわかってくれている人たちがいるんだなということを自主避難者の人たちにも伝えることができて、「すごく久しぶりに笑った、温められた」と言ってくださって。ちょっと冷えていたと思うんですよね、心が。それをみんなでほわっと包んで、温めることができたかなと思います。

 

−私はイベントで、埼玉に自主避難された方の「私は援助をもらっていることに罪悪感がある」という打ち明けがすごく心に刺さりました。なかなかそういうものって口から出すことが大変だと思うのに、あの場だったからこそいえたのかなと思うと、すごくいいイベントだったように感じました。

鎌仲:そんなに罪悪感持たなくていいんだよという感じなんですけどね。安全だとか安心だとかというふうにその場所が思えたら、そういうことも話せるんです。本当はもっと立場の違う人にも来てもらいたかったのですが、「(自分の行動が批判されるのが)怖くて来られない」という方もいました。この問題は、すごく深い分断なので、一遍には乗り越えられないかもしれない。けれど、みんな相手を憎んだり、不幸になれと思っていたりするわけではなく、ほとんどの人は優しい気持ちを持っている。この優しい気持ちが外に出てみんなに伝わることが今は大事なんです。そういう場づくりをしています。

 

−今後のイベントも話し合える場にしていく予定ですか?

鎌仲:今回の試みがすごくよかったので、もうちょっと深めて、3 月にも同じようなスタイルでやろうかなと思っています。

テーマは、やっぱり継続的に。だから違う立場の人にも来てもらいたいと思っています。会場でも言っていたように、「NO MORE HIBAKU」なんですけど、私たちのニーズは(「○○したい!」「○○がいい!」というような肯定的な)YES だから、そこの歩み寄りの部分をみんなで探ろうって、そういう集まりにしようと思っています。被ばくは確かに嫌だけれど、その先にある自分たちのこうあってほしい未来も考える。そこがはっきりと見えれば、みんな元気が出ると思うんです。原発はだめ、だけじゃなくって、「ほら、これでもう大丈夫だよ」っていうものがあれば。自然エネルギーの可能性が実はすごく現実的なんだ、お金にもなるんだっていうことも、伝えることがすごく大事だと思います。

 

−鎌仲さんは映画監督のお仕事をしながらこういうイベントを開催されていますが、大変ではありませんか?

鎌仲:そうですね。でも、映画を作ることが最終目標ではないんです。ただ映画をつくってみんないい映画だったねって終わりになるのではなくて、映画を観た人たちがそれを自分の中で消化して、それを何かアクションに結び付けていただきたいなと思っています。私の創作活動として「映画をつくること」が真ん中にあるのですが、ただそれだけではなくて、その先にある、何かいい変化が起きることを期待しているんです。だから、映画以外でもそれができるんだったら、いろいろなやり方でそれをやります。

人間は、意識が変わらないとライフスタイルの変化もアクションも出てこないので、映画をみることで意識が変わり、何かを考えて、何かをする。変化やアクションにはそういうプロセスが必要なんです。だから、映画はその中のひとつの重要なプロセスだと思っています。

 

−鎌仲さんの映画を観させてもらって、刺激をいただいて、動き方を変えなければいけないと感じました。

鎌仲:ありがとうございます。それまで私は受け皿が必要だと思っていました。気が付いて、何ができるだろうって思ったとき、もう既に行動している人がいるからそこに行ってちょっとお手伝いするだけでも違うんじゃないかと。でも実はみんなすごく力を持っていて、いつか使おうとは思っているのだけれど、使わないままに日々が過ぎていたり、自分ができることに気が付いていなかったりするだけのように最近強く感じます。だからその力を使ってみたらどうかなと。そういう意味ではすごく可能性とかポテンシャルが私たちにはまだまだあると思うんです。

 

−大川印刷では印刷物を通して社会貢献活動を行っています。鎌仲さん も、映像作品やイベントを通して社会活動をされていて、そういう活動は、意識して続けなければいけないと思うのですが、鎌仲さんが活動をするときにここを軸にしている、というものがあれば教えてください。

鎌仲:私が何か「しよう」とすると、すごく難しいんです。楽しいテーマじゃないし、厳しい重いテーマだから。でも、それは、私がやらなければ誰もやらない。だからやる。そうすることがささやかですけど、変化につながるというふうに信じています。

本当に小さい変化かもしれないですけれど、それは必ず起きる、無駄じゃないと思っていて、そういう一人ひとりが小さなことをやっていくってことが大事かなと思っています。「私は私ができる小さな変化を作り続けていく」っていうか。ささやかだとは思うけれど、ささやかであることが大事なんです。たとえば首相がドカンとやることよりも、普通の人、一人ひとりが小さなことを積み重ねていくことが一番大事なんです。私のやっていることはその中のひとつ。それはやっていく価値があると思っています。伝われば反応がある。実際に私の映画をみて、動いてくださる方もたくさんいます。変化が共有されていくことも、すごく力になる。仲間づくりになっています。

 

映画監督 ドキュメンタリー作家 鎌仲ひとみさん

早稲田大学卒業と同時にドキュメンタリー映画制作現場へ。 90 年最初の作品「スエチャおじさん」を監督、同年文化庁の助成を受けてカナダ国立映画制作所へ。93 年から NY のペーパータイガーに参加して、メディア・アクティビスト活動。95 年帰国以来、フリーの映像作家としてテレビ、映画の監督をつとめる。

2011 年全国映連賞・監督賞受賞。

映画の自主上映会・DVD のお申し込み 鎌仲ひとみ公式サイト

http://kamanaka.com/

 

 

 

 

※このインタビューはCSRの和33号に掲載されたものです。

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